蛍光ランプの点灯方式
蛍光ランプは放電により発光します。点灯(始動)する為には電極のフィラメントにあらかじめ余熱電流を流して高温になったエミッタ―(電子放出物質)から電子を放出させると共に、電極間に高電圧をかける必要があります。その方式により器具(安定器)とランプの構造が変わります。
蛍光ランプの主な点灯方式
スタータ形
あらかじめフィラメントを予熱してから放電を開始する方式です。
点灯の仕組み
スイッチを入れて電圧を加えると点灯管の接点が閉じ、両方のフィラメントに電流が流れる。
フィラメントに短絡電流が流れ、エミッタ―(電子放出物質)を予熱し、電子が放出されます。
やがて、点灯管の接点が開くと、その瞬間に安定器から「インダクションキック電圧」と呼ばれる高電圧が両極間にかかり、蛍光ランプが始動します。
始動後はランプ電流による熱でエミッタ―が加熱され、電子が放出され続けます。
電子点灯管では、電子回路によりこのスタータの働きを改善し、より短時間でランプが始動します。
ラピッドスタート形
その名の通り、スイッチを入れると速やかに点灯する点灯方式です。前述の「スタータ形」より点灯時間を短縮させる為に開発された方式です。
点灯の仕組み
ランプ両端のフィラメントが、安定器の予熱巻線から供給される電流で加熱されます。
同時に、始動に必要な電圧がランプ両端にかかります。このとき始動補助導体とフィラメントとの間に微弱な放電が発生し、すぐに主放電に発展します。
この為、点灯刊などのスタータは不要になりますが、始動補助の為の近接導体が必要になります。近接導体は器具が代用する場合と、ランプ自体に設けてある場合があります。
高周波点灯方式
電子安定器(インバータ)により、50/60Hzの交流電源を一旦直流に変換してランプを点灯させます。この点灯方式では従来の交流電源による点灯と比較して次のような利点があります。
点灯の仕組み
蛍光ランプ特有のちらつきが解消され、目に優しいです。
高周波点灯により、ランプ効率がアップします。(省エネ効果、ランプ効率アップに効果が高い。)
他の方式の安定器の「ジーッ」という唸りの音が殆ど無いです。
50Hz/60Hzの地域による周波数の違いの影響を殆ど受けません。
電子安定器が従来のものに比べ、小型化・軽量化されています。
蛍光ランプの寿命特性
「寿命」の定義
長時間製造している同一形式の蛍光ランプを2時間45分点灯し、15分消灯する連続繰り返し試験において、ランプが、 ・点灯しなくなるまでの点灯時間 ・全光束が初光束の60%に下がるまでの点灯時間 「点灯寿命」又は「有効寿命」のどちらか短い方を採用すると規定されています。
点灯寿命
別称として「絶対寿命」、「電極寿命」と呼ばれています。始動時や点灯中にフィラメントに塗布されたエミッタ―が消耗され、ランプが点灯しなくなるまでの時間です。
蛍光ランプではカタログに記載されている「定格寿命」で一度に全部が切れるのではなく、製造条件や点灯条件によりバラツキがあります。尚、点滅が頻繁に行なわれたり、電源電圧が大きく変動する場所などではランプ電流が適正範囲から外れ、エミッタ―の消耗が増大して寿命が短くなります。
有効寿命
別称「光束寿命」ともいいます。蛍光ランプの明るさが点灯時間と共に減衰し、所定の明るさが得られなくなるまでの時間を指します。
点灯中の明るさの低下は蛍光物質の劣化により起こります。(右図参照)JISでは、「100時間点灯後の明るさ(初光束)と点灯後の明るさの比率が70%(演色性の区分がSDL,EDLのランプ及びコンパクト形蛍光ランプでは60%)になる迄の時間」で定義しています。
定格寿命
JISでは、「点灯寿命」又は「有効寿命」のどちらか短い方で決められる寿命について、長期間にわたり製造されたランプの平均値に基づいて公表された寿命と規定しています。
点灯回数と寿命の関係
蛍光ランプの点灯寿命は点灯中よりもランプ始動時にエミッターの消耗が激しい為。、点灯回数が多ければ、寿命は縮まります。1回の点灯で30〜1時間30分程度寿命が短くなります。
周囲温度と寿命の関係
周囲温度が高温になるとランプ電流が増加し、フィラメントの温度が高くなり過ぎてエミッターの蒸発が多くなります。逆に低下すると始動不確実及びランプ電流が低下してフィラメント温度が低くなりすぎる事が原因となってエミッターの飛散が多くなり、いずれも寿命が縮まります。蛍光ランプを露出の多い器具で使用する場合、冷房器具などの近くで風が直接ランプにあたるとランプ管壁が冷やされm、周囲温度が低い場合と同様に寿命が短くなる事があります。周囲温度が低く風があたる場所ではカバー付器具を使用することが推奨されます。
電源電圧の変動と寿命の関係
蛍光ランプのフィラメントでは、定格電圧でその機能が最高に発揮できるように設計されています。電源電圧が高すぎると、ランプ電力が増え、フィラメントの温度が高くなりすぎてエミッタ―の蒸発が多くなります。逆に電源電圧が低くなりすぎると始動不確実になり、指導の際に点滅を繰り返したり、また、ランプ電流が低下して点灯中のフィラメントの温度が低すぎる事が原因となってエミッターの飛散が多くなり、いずれの場合も寿命が縮まる原因となります。
電源周波数と寿命の関係
わが国では、50Hz及び60Hzと地域によって交流電源の周波数が異なります。電源周波数に適合しない安定器を使用した場合はランプ電流が大きく変わる為、駅光ランプの寿命に著しく悪影響を及ぼします。
50Hz用の安定器を60Hz地域で使用した場合 |
ランプ電流が低下して、寿命が短くなります。 |
60Hz用の安定器を50Hz地域で使用した場合 |
ランプ電流が約15〜20%増加して寿命が短くなるだけでなく、場合によっては安定器自体が破損する恐れがあります。 |
必ず使用する地域の電源周波数に適合した安定器を使用することが大切です。(尚、50Hz/60Hz共用のものもあります。)
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